フッ素は子どものむし歯予防に使うもの、というイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし実は、フッ素は大人にとっても良い予防ケアの一つです。
むし歯になりにくい歯をつくるためには、日々の歯磨きとともに、定期的なフッ素塗布が必要です。
今回は、フッ素とは何か、そして大人にとってもなぜフッ素が重要なのかについて解説します。
目次
■フッ素とは何か?
◎歯のエナメル質を強くする元素
フッ素とは、自然界に存在する元素の一つで、歯の表面のエナメル質を強くする働きを持っています。
私たちが日常的に摂取している水や野菜、魚介類などにも微量に含まれており、体にとってごく自然な成分です。
歯科で使われるフッ素は、これを高濃度で利用することで、むし歯予防の効果をさらに高める目的で塗布されます。
むし歯のリスクが高い子どもだけでなく、成人や高齢者にとっても重要な役割を果たすのがフッ素なのです。
■フッ素の効果とは?
◎歯の再石灰化を促進し、初期むし歯を修復する
フッ素の代表的な効果の一つが再石灰化の促進です。
むし歯は、食べ物に含まれる糖分をエサに、細菌が酸をつくります。その酸によって歯の表面からミネラルが溶けること(脱灰:だっかい)によってむし歯が始まります。
しかし、フッ素はその逆の効果、つまり再び歯にミネラルを取り込む再石灰化を助けます。
初期のむし歯であれば、フッ素によって歯が修復され、削る必要がなくなるケースもあります。
つまり、定期的にフッ素を利用することで、むし歯を初期段階で食い止めることができるのです。
◎むし歯菌の活動を抑える抗菌作用
フッ素には、むし歯の原因となるミュータンス菌などの活動を弱める抗菌作用があります。
これにより、歯垢(プラーク)中の酸産生が抑えられ、口腔内のph(酸性かアルカリ性か示す値)が安定しやすくなります。
歯磨きと併用することで、フッ素はむし歯予防の大きな力となります。
◎エナメル質を強化してむし歯に強くする
フッ素が歯の表面に作用すると、フルオロアパタイトという構造ができ、もともとのエナメル質よりも酸に対して強くなります。
これにより、同じ生活習慣でもフッ素塗布をしている人の方が、むし歯になりにくくなることがわかっています。
■大人にとってもフッ素は必要?
◎根面う蝕や二次カリエスのリスクが上昇
大人になると、加齢や歯周病によって歯肉が下がり、歯の根元が露出してきます。
根面は非常にむし歯になりやすく、子どもの時よりもむし歯リスクが高まるため、フッ素によるケアがより重要になります。
また、大人は二次カリエスといって、詰め物や被せ物をした下に再度むし歯ができるリスクも高くなります。
■定期的なクリーニングとフッ素塗布の併用が効果的
◎歯科でのフッ素塗布がカギ
市販の歯磨き粉にもフッ素は含まれていますが、歯科で行うフッ素塗布はその濃度が高く、より効果的です。
3ヶ月~6ヶ月に一度の定期検診時にフッ素を塗布することで、むし歯リスクの軽減につながります。
◎クリーニング後に塗布することで効果が高まる
歯石やプラークが付着している状態では、フッ素が十分に浸透しません。
そのため、クリーニングでしっかりと歯面を整えたあとに塗布するのがベストなタイミングです。
クリーニングとセットでフッ素塗布を行うことで、むし歯予防効果が上がります。
【大人でもフッ素塗布を】
フッ素はエナメル質を強化し、むし歯を予防する力を持つ自然元素です。
その効果は子どもに限らず、大人にも有効です。
再石灰化の促進、抗菌作用、むし歯に強い歯質づくりなど、定期的なクリーニングと組み合わせることでより予防効果が発揮されます。
予防を意識するなら、フッ素塗布を日々のケアに取り入れるだけでなく、歯科医院での定期チェックを習慣にするのがおすすめです。