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60代から始めるお口の健康管理と受診の目安
60代の歯周病予防は、毎日ていねいに歯をみがくことと歯科医院での定期検診を組み合わせ、歯ぐきの出血や噛みにくさといった小さなサインのうちに相談することが基本です。この記事では、自分で気づける初めのころの症状、自宅の手入れと歯科での処置の役割の違い、糖尿病や心臓の病気など体全体の健康との関わり、持病や飲んでいる薬がある場合の受診の準備についてご説明します。しばらく歯科から足が遠のいていた方も、まずは今の状態を確かめる手がかりとしてご覧ください。
この記事の要点まとめ
- 歯ぐきから血が出る、腫れる、かみにくいといった変化に気づいたら、痛みがなくても歯科医院へ相談しましょう。
- 毎日の歯みがきや歯と歯の間のそうじに加え、定期検診で歯周ポケットの確認や歯石取りを受けることが大切です。
- 持病や飲んでいる薬がある方は、お薬手帳などを持って行き、薬を自分の判断で止めずに歯科医師に伝えましょう。
歯ぐきの出血や噛みにくさは歯周病のサイン?60代で歯科に相談する目安

出血・腫れ・口臭・噛みにくさ・歯の揺れ:自分で気づける歯周病のサイン
歯磨きをしたときの出血や硬い物の噛みにくさは、歯周病が始まっているサインの可能性があります。鏡を見たときや食事の際に、次のような変化がないか振り返ってみましょう。
- 歯を磨いたときや、りんごなどをかじったときに歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが赤く腫れている、または下がって歯が以前より長く見える
- 朝起きたときに口の中がねばつく、口臭が気になる
- 硬い物が噛みにくい、または指や舌で触れると揺れる感じがする
これらがいくつか当てはまるときは、早めに相談するひとつの目安になります。歯がぐらつくときは、歯を支える骨(歯槽骨)やかみ合わせを確かめる必要があります。自分で触り続けず、歯科医院へご相談ください。
「痛みがないから急がなくてよい」はよくある誤解:進み方に個人差がある理由
痛みがなくても、サインに気づいた時点を受診のきっかけにする必要があります。歯周病は初期から中等度にかけて強い痛みが出にくく、気づかないうちに歯を支える骨が少しずつ減っていくことがあるためです。
また、同じような口の中の環境であっても、歯周病の進み方には個人差があり、一部の方は重症化しやすいことが報告されています1。「むし歯になったから」ではなく「悪くなる前に」確認するという考え方の転換が、ご自身の歯を長く保つことにつながると考えます。
抗凝固薬を服用中の出血は磨き方?歯周病?自分で見分けにくい理由
血液をサラサラにする薬(抗凝固薬など)を服用している場合、歯ぐきの出血が薬の影響なのか、歯ぐきの炎症やブラッシングの力の強さによるものなのかを、ご自身で見分けることは困難です。複数の要因が重なって出血しているケースも少なくありません。
出血を気にして歯磨きを控えてしまうと、汚れが残ってさらに歯ぐきの炎症が進みやすくなります。まずは服薬中であることを歯科医師へ伝えたうえで、歯ぐきの状態を直接確認してもらう流れをお勧めします。
唾液の減少と長年の自己流の磨き方:60代に重なりやすい歯周病の要因
60代では、加齢や服用しているお薬の影響で唾液が減り、お口の中が乾きやすくなる方もいます。唾液には汚れを洗い流す働きがあるため、乾燥が続くと細菌が増えやすい環境になります。
さらに、予防の習慣が今ほど一般的でなかった時代からの自己流の磨き方や、過去に入れた詰め物・ブリッジの周りの磨き残しが重なりやすい時期でもあります。これまでの経緯を気にする必要はありませんので、今の口内に合った手入れへ見直す機会にしていきましょう。
ポイント
歯周病は痛みがないまま進むことがあり、服薬中の方は出血の原因も自分では判断しにくいため、変化に気づいた段階での受診が推奨されます。
自宅での手入れと歯科での検診、60代の歯周病予防で担う役割の違い
毎日の歯磨きと歯間清掃:出血がある部位こそやわらかく丁寧に続ける
出血がある場所ほど、やわらかめの歯ブラシを使って弱い力で丁寧に磨き続けることが基本です。歯と歯ぐきの境目に溜まった歯垢(プラーク:細菌のかたまり)を取り除くことで、歯ぐきの炎症が落ち着きやすくなります。
歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間やブリッジの下には、歯間ブラシやデンタルフロスを併用します。隙間の広さに合わないサイズを使うと歯ぐきを傷つけることがあるため、道具の選び方や手指が動かしにくい場合の工夫は、歯科医院で相談しながら決めていくと無理がありません。
洗口液は歯ブラシの代わりにならない:補助として使うときの考え方
洗口液(マウスウォッシュ)は、歯ブラシや歯間ブラシによる清掃の補助として使うものです2。海外では、ふだんの歯みがきにクロルヘキシジンという成分の洗口液を加えたとき、歯みがきだけの場合と比べて歯ぐきの炎症や歯垢がどう変わるかが調べられています2。ただし、海外の研究の結果を、日本で売られている洗口液にそのまま当てはめることはできません。
そもそも、歯の表面に張りついた汚れの膜は、うがいだけで落とすことはできません。まずは歯ブラシで汚れを動かして落とし、そのうえで歯ぐきの状態に合った洗口液を取り入れるかどうかを、歯科医師や歯科衛生士に確認しましょう。
歯周ポケット検査・歯石除去・局所の薬剤:歯科でしかできない確認と処置
歯科医院では、自宅では確認できない「歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の溝)」の深さ、出血の有無、歯の揺れ、レントゲンによる骨の状態などを多角的に調べます。硬くなった歯石や歯周ポケットの奥の汚れは歯ブラシでは取れないため、専用の器具で取り除きます。
また、歯ぐきの奥の清掃に加えて、歯周ポケットに直接入れる抗菌薬が補助的に使われることもあります3。
当院では、MTM(メディカルトリートメントモデル)という考え方に沿って、まず患者さまのお話を聞き、専門的な検査の結果をご説明したうえで原因に対応します。そのうえで「治療を行わないための治療」「再治療を行わないためのセルフケアの確立」をめざし、一人ひとりに合った予防プログラムを立てています。
自宅ケアと歯科検診の役割、通う間隔と費用・リスクの目安
自宅での手入れと歯科医院での検診・メインテナンスの併用には、それぞれ異なる役割があります。
| 確認すること | 自宅の手入れのみ | 歯科での検診・メインテナンス併用 |
|---|---|---|
| 目的 | 毎日の新しい歯垢を落とす | 歯石や奥の汚れを落とし、小さな異変を早く見つける |
| できること | 歯の表面や歯間の清掃 | 歯周ポケット検査、骨の確認、歯石除去、磨き方の確認 |
| 頻度の目安 | 毎日(毎食後や就寝前) | 一般的には3〜6か月ごと(歯ぐきの状態によってはもっと短い間隔) |
| 費用の確認方法 | 清掃用具の購入費のみ | 検査や処置の内容によるため、受診する医院に確認 |
| 向いている人 | 日常の基本ケアを続けるすべての方 | 出血や噛みにくさがある方、持病や服薬がある方 |
検診の間隔は、一般的には3〜6か月ごとが目安で、歯ぐきの状態によってはもっと短い間隔になります。サインがない方も定期的な確認を取り入れ、出血や持病がある方は歯科医師と相談して通院ペースを決めていきましょう。
歯ぐきの手術(歯周外科治療)が健康保険で受けられるかどうかは、処置の内容によって変わります。そのうえで、歯ぐきや骨の状態を整える処置から被せ物までを自由診療(公的医療保険が使えない診療)で行う場合の、一般的な目安は次のとおりです。歯ぐきや骨の状態、処置の範囲によって変わります。
- 期間: 3〜12か月ほど
- 通院: 5〜12回ほど
- 総額: 20万〜35万円ほど(処置が1か所、被せ物が1本の場合。か所や本数が増えるとそのぶん上がります)
- 内訳: くわしい検査と診断に1万〜3万円ほど、歯ぐきの手術や骨を再生・造成する処置に1か所あたり5万〜15万円ほど、被せ物に1本あたり8万〜18万円ほど
ここに書いた金額は一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。
主なリスク・副作用として、歯ぐきの手術などの処置の後には、痛みや出血が出ることがあります4。しばらくは冷たい水を飲んだときや歯みがきのときにしみる知覚過敏が続いたり、前歯では歯ぐきが下がって(歯肉退縮)見た目が変わったりすることもあります4。
ポイント
毎日の歯垢は自宅の歯磨きで落とし、取り切れない歯石や骨・歯周ポケットの確認は歯科の定期検診で補うという役割分担が基本になります。
糖尿病や心臓の病気と歯周病の関係、持病や服薬がある60代の受診準備
糖尿病・心臓・肺の病気・認知機能:関連が報告されていることと断定できないこと
歯周病による長く続く炎症は、お口の中だけでなく体全体の健康とも関わりがあるとして研究が進められています。糖尿病や心臓・血管の病気のほか、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった呼吸器の病気との関わりを調べた研究5や、歯周病の菌や炎症が認知機能に関わるしくみについての報告6もあります。
ただし、関連が報告されていることと、「歯周病があると持病が必ず悪化する」という直接の因果関係がすべて断定されていることは別です65。過度に恐れるのではなく、体調管理の一環としてお口の炎症を減らしておくことが、結果として日々の健康を支えることにつながると捉えておくとよいでしょう。
抗凝固薬や血糖の薬を自己判断で止めない、残った抗菌薬を飲まない理由
歯科を受診するからといって、服用中の抗凝固薬や血糖を管理するお薬を自己判断で中断することは控えてください。お薬を勝手に止めると、脳梗塞や血糖値の乱れなど、全身の病気の管理に大きな影響を及ぼすおそれがあるためです。
休薬や調整が必要かどうかは、歯科医師が内科などの主治医と連携して判断します。抜歯などの処置のときも、お薬を続けるかどうかは自分で決めず、飲んでいるお薬を歯科医師に伝えたうえで決めていきます。
また、「歯ぐきが腫れたから」と、以前に別の病気で処方されて自宅に残っていた抗菌薬(抗生物質)を自己判断で飲むことも避けましょう7。症状に合わない服用は薬が効きにくい菌(薬剤耐性菌)を増やす原因になるため、処方されたお薬は指示どおりに扱うことが公的機関からも呼びかけられています7。
お薬手帳・血液検査の結果・主治医の連絡先:受診時に伝えておきたい情報
持病や服薬がある方が歯科を受診する際は、体への負担に配慮した計画を立てるため、初診時に次の情報を共有していただくとスムーズです。
- いま飲んでいるお薬がすべてわかる「お薬手帳」
- 最近の血液検査の結果(血糖値やHbA1c、血の固まりやすさの数値など)
- 通っている内科などの病院の名前と、主治医のお名前
- 血が止まりにくい、口が乾きやすいといった、ふだん気になっていること
何年も歯科を受診していなかったとしても、過去の経緯を責めるようなことはありません。今の全身状態とお口の悩みをそのまま伝えることが、これからの予防の出発点になります。
あま市の当院で相談する流れと、器具の滅菌・口腔外バキュームなどの衛生管理
あま市にある当院は、名鉄津島線「七宝」駅から徒歩3分で、約100台分の共同駐車場があります。最初から診療チェアーに座ったままでは緊張してしまう方のために、完全個室のカウンセリングルームをご用意いたしました。診察室もすべて完全個室となっており、メインテナンス棟も備えています。
また、高圧蒸気滅菌器や小型高圧蒸気滅菌器を用いた器具の滅菌、診療中の飛沫や粉塵を吸い込む口腔外バキュームの使用など、院内の衛生管理にも取り組んでいます。お仕事や内科への通院と両立しやすいペースも含め、まずはお薬手帳をお持ちのうえ、お口の状態を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q1. 歯周病にならないためにはどうしたらいいですか?
A. 毎日の歯磨きと歯間ブラシ・デンタルフロスで歯垢を落とすことと、歯科医院で定期的に歯周ポケットの検査や歯石除去を受けることの2つを続けるのが基本です。あわせて、禁煙や規則正しい食生活、お口の乾燥対策など、生活習慣を整えることも予防につながります。
Q2. 歯ぐきの腫れや歯周病に市販のビタミン剤(チョコラBBなど)は効きますか?
A. 市販のビタミン剤(チョコラBBなど)では、歯周病の直接の原因である歯垢や歯石を取り除くことはできません。歯ぐきの腫れや出血が続く場合は、市販薬だけで様子を見るのではなく、歯科医院で原因となっている汚れの除去や検査を受ける必要があります。
Q3. 1日に何回歯を磨くのがよいですか?海外では2回が一般的と聞きました。
A. 一般的には、朝と寝る前を含めて1日2回以上磨くことが目安です。そのうえで大切なのは、回数だけでなく「歯と歯ぐきの境目の歯垢がきちんと落とせているか」です。特に就寝中は唾液が減って細菌が増えやすいため、夜寝る前の歯磨きと歯間清掃を丁寧に行うことを意識してみてください。
Q4. 高齢になると必ず入れ歯を入れる必要がありますか?90代でも自分の歯は残せますか?
A. 年齢を重ねたからといって、すべての方が入れ歯になるわけではありません。60代以降からでも歯周病の管理や噛み合わせのケアを続けることで、80代・90代になってもご自身の歯を活かして食事を続けている方はいらっしゃいます。残っている歯の状態に合わせた手入れを今から始めることが大切です。
Q5. 歯科検診や歯がグラグラするときの固定にはどのくらい費用がかかりますか?
A. 健康保険の3割負担なら、検診や歯石取りは1回あたり数千円ほどが一般的な目安です。実際の費用は、歯ぐきの検査のやり方や歯石の量、揺れている歯を固定する範囲、保険が使えるかどうかによって変わります。お口の状態をみたうえでくわしい費用を案内してもらえるので、通っている歯科医院にたずねてみてください。
参考文献
1. 日本臨床歯周病学会「歯周病は約1割が重症化!?」 https://www.jacp.net/perio/severe/
2. James P, Worthington HV, Parnell C et al. Chlorhexidine mouthrinse as an adjunctive treatment for gingival health. The Cochrane database of systematic reviews (2017). PMID: 28362061 / DOI: 10.1002/14651858.CD008676.pub2
3. Herrera D, Matesanz P, Martín C et al. Adjunctive effect of locally delivered antimicrobials in periodontitis therapy: A systematic review and meta-analysis. Journal of clinical periodontology (2020). PMID: 31912531 / DOI: 10.1111/jcpe.13230
4. 歯周外科治療を詳しく解説! | 歯周病のことがよくわかる「ペリオブック」|日本歯周病学会監修. https://periobook.perio.jp/treatment-knowledge/91/
5. Molina A, Huck O, Herrera D et al. The association between respiratory diseases and periodontitis: A systematic review and meta-analysis. Journal of clinical periodontology (2023). PMID: 36606394 / DOI: 10.1111/jcpe.13767
6. 認知機能と口腔の健康:歯周病と口腔機能の関連性に係る最新の知見と今後の展望 https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/68/1/68_16/_html/-char/ja
7. 政府広報オンライン「抗菌薬が効かない『薬剤耐性(AMR)』が拡大!一人ひとりができることは?」 https://www.gov-online.go.jp/article/201611/entry-10538.html
東海高校卒業
福岡県立九州歯科大学卒業
医療法人社団マウデントにしわき歯科(岐阜県垂井町)にて
多岐にわたる治療を学び研鑽を重ねる
2011年4月13日、あま市七宝町にごとうデンタルクリニック・おとなこども矯正歯科を開院
2017年10月、医療法人 愛和会設立
2017年11月、メインテナンス専用ルームとセミナールームを増築
日本顎咬合学会認定医(かみ合わせ認定医)
POD勉強会、SSRG、TNG、PGI名古屋
【所属学会】
日本顎咬合学会
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本臨床歯周病学会
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